ラッシュガードとは
ラッシュガードは、元々サーファーがウエットスーツの下に着るアンダーウエアとして着用していました。当時のウェットスーツは生地が固く、表面も荒かったため、特に首回りや脇の下(※サーフィンにおけるパドリングという腕を回す動作があるため)が擦れて痛くなり、次の日には、ウェットスーツを着れない、サーフィンできない、ということもあったほどです。このようにラッシュガードは、ウェットスーツ着用時に身体の擦れ防止対策として着ていました。
某老舗ウェットスーツブランドでは、今でもラッシュガードにハイネック(首元のカラーが高い)タイプが存在するのは、首回りをウェットスーツの擦れから守るためのものです。また、RASH
GUARD(ラッシュガード)という言葉からも分かる通り、RASH(擦り傷)+GUARD(守る)、つまり、ウェットスーツとの摩擦による擦れ「RASH(擦り傷)」から肌を「GUARD(守る)」というのが語源です。
現在は、ウェットスーツの生地も柔らかくなり、肌触りも良くなったので、ウェットスーツと肌が直接触れても、肌が赤くなっり、擦れることはなくなりました。
ラッシュガードの開発
当時、ウェットスーツのアンダーウェアとして何が良いか模索していたようです。ウェットスーツの中に着用するので、薄手の生地でなくてはなりません。さらに、サーフィンの動きを妨げない伸縮性のある素材でなければなりませんでした。
そこで、注目されたのが合成繊維のナイロンであると言われています。薄くて伸縮性があり、表面が滑らかなので、ウェットスーツのアンダーウェアとしては最適だったのでしょう。さらに、合成繊維は、工業製品であるので大量生産が可能だったため急激に普及したと思われます。
ラッシュガードが、タイトなつくり(着用するとピチピチ)となっているのも、元々、ウェットスーツのアンダーとして開発されたことを考えると納得できると思います。
夏もラッシュガードを着用したサーファー
昔の話ですが、サーファーたちが、夏場、ボードショーツ(サーフトランクス)を履いて、上半身裸でサーフィンしていると、サーフボードに塗られたワックスとお腹や胸あたりが擦れ、サーフィンどころでなくなってしまうことがありました。
サーフワックスも、今でこそ、素材の進化により、非常にソフトになりましたが、当時は、塗った後は、「ゴワゴワ」していて、肌の弱い方や長時間サーフィンしていると、お腹や胸(乳首)が擦れて、赤くなり、2、3日するとカサブタができるほどでした。Tシャツなどを着て、擦れを防いでいたようですが、素材的に水に濡れると重くなり、動きにくくなるので、向いていなかったようです。
そこで、当時ウェットスーツのインナーとして着用していたラッシュガードを使用したところ、サーフボードとの擦れも少なくなり、多くのサーファーが夏場もラッシュガードを着るようになりました。カラフルなラッシュガードは見た目もかっこよく、サーファーの憧れでもあったようです。また、今までハイネックのラッシュガードしかありませんでしたが、ローネック(首元のカラーの高さが低い)が発売されたのも、こうしたサーファーの利用方法の変化に応じたものでした。
このように、当時は、ラッシュガードと言えば、半袖か長袖、ハイネックかローネックといた4種類のみでした。ハイネックは主にウェットスーツのアンダーとして、ローネックは夏場のボードショーツ(サーフトランクス)との組み合わせで着用し使い分けるようになりました。とはいっても、ほとんどの人がハイネックを選び1年を通して使用していました。
サーファーを悩ましたラッシュガード
夏場、ラッシュガードを着てサーフィンしていると、波に巻かれた時、その衝撃でお腹のあたりからラッシュガードがめくれあがってしまうのです。多少のめくりあがりでしたら問題ないのですが、大きい波の時は、衝撃も強く、顔のあたりまでめくれあがってしまうのです。息ができない!という問題がありました。
そこで、ラッシュガードの裾部分に輪っか(ボードショーツループ)が装着されたのもこの時でした。時折、ラッシュガードを買われたお客様から「変な紐(ループ)」が付いているのですが・・・という質問を受けます。これはボードショーツ(サーフトランクス)の前側にあるウエストを調整する紐を通すためのループなのです。つまり、ラッシュガードのめくりあがり防止ループということです。
紫外線が体に良くない
ひと昔前までは、紫外線が体によくない、UVケア、日焼け対策、なんて言葉はほとんど耳にしませんでした。夏の海水浴と言えば、男の人は海水パンツ1枚で、上半身は何も着ない、女性の方も水着1枚、子供も学校で支給される水泳パンツ1枚で、泳いだり、日に当たったりしていました。今では少し考えられない話ですが。
この紫外線、適度の照射は基本的に体に良いとされており、日照時間の少ない北欧ヨーロッパなどでは、故意に紫外線に当たることもあります。しかし、長時間紫外線に当たると、肌の老化やシワの原因となることが分かってきました。特に日本人は黄色人種と呼ばれ、紫外線に強い人種ではありません。
こうした紫外線による身体への悪影響が証明されてくると、所謂、紫外線対策グッズが多く誕生、販売されるようになってきました。
ラッシュガードの素材
ラッシュガードの素材は、主に合成繊維のナイロンですが、最近では、ナイロンにスパンデックス(ポリエステル)を混合させ、伸縮性に優れたものもあります。また、機能剤などを繊維に練り込んで、さらに紫外線対策を施したラッシュガードもあります。
ラッシュガードが一般の方にも
以前は、ラッシュガードと言えば、サーファーだけが使用するものでした。しかし、このラッシュガード、夏場の紫外線対策になる、水の中でも重くならない、薄くて軽い、動き易い、速乾性がある、などの理由から、サーファーだけでなく、一般の方でも、海水浴やプールなどで着るようになりました。
当初、公共のプールでラッシュガードを着ていると、プールの監視員の方に、Tシャツ(洋服)は脱いでください、と注意をされたのを覚えています。当時は、ラッシュガードが一般的ではなかったので、なかなか理解されなかったようです。
今では、ラッシュガードを着ることが当たり前となり、積極的にラッシュガードを着るようになりました。